アルクェイドが爪を振り下ろす。それを受けた男は断末魔をあげ崩れ落ちた。
これで何度目になるのだろう。この哀れな被害者を殺しても真犯人は必ずよみがえるというのに。
アルクェイドがこちらを向く、これもいつものことだ。おそらくは私は殺されるのだろう。以前はまだ嫌味のの応酬もあったのだが最近は言葉を交わすことも無い。だから私もいつものように黒鍵を――
「久しぶりねシエル。少し老けた?」
「…あなたは変わりませんね。アルクェイド」
「まあまあ、そんな怖い顔しないで、たまには一緒に食事でもしない?」
今回はいつもと少し違うようだ。まあ、たまにはこんな気紛れに付き合うのも悪くは無いだろう…

「一文無しのくせに、よくも人を食事に誘えますね。」
「せっかく換金しても起きた時に使えないと腹が立つじゃない?」
「だからって…、私もあまりお金ありませんよ?」
「うーん、じゃあシエルにこれをあげよう。」
金色の石がテーブルに置かれる。
「…本物ですか?」
「もちろん」
「好きなものを頼んでください。」
「好きなものって言ったって、カレーしかないじゃない…。じゃあこのチキンカレーセットにしよう。」
「では私も同じものを」
店員に声をかけ注文を伝える。
「…待ってください。じゃあどうやって日本に来たのですか?」
「まあその辺は魔眼でちょちょいと。」
「あなたという人は…」
「いいじゃない。それにシエルだってうまくやればカレー食べ放題だよ?」
「そっ、そんな甘言に惑わされません!」
「別にいいと思、けどなー」
「そんなのカレーを作ってくれる人に失礼じゃないですか!」
「そっちの問題なんだ…」
たわいも無い話をしながら食事を続ける。まるで仲のいい友人のようだ。

「それで今日は何かあったのですか?」
「んー?」
「いきなり食事だなんて、何か理由があるんじゃないんですか?」
「んー」
「遠野君のことですか?」
「うーん」
「珍しくはっきりしませんね。」
「せっかく日本に来たんだし、お墓ぐらい参ろうかなーと」
「行ってくればいいじゃないですか。」
「私はお墓の場所知らないもの。」
「そういえば遠野君がロアに殺されちゃった後、あなたはすぐにどっかいっちゃいましたね。」
「あの後どうなったの?」
「私ががんばって倒しました。その後は秋葉さんに事情の説明に行きました。」
「妹は怒ってた?」
「ええ、多分今でも怒っていると思いますよ。」
「私のせいかな。」
「そりゃあ、そうでしょう。」
「でも志貴だって私を殺したし。」
「あなたは殺しても死なないでしょう。それに私に言い訳を言ってどうするんですか。」
「いいじゃない。聞きなさいよ。」
「あなたらしくありませんね。」
「シエルは私を恨んでないの?」
「なぜですか?」
「だって私がいなければシエルもそんな体にならなかったかも知れないじゃない。」
「…恨んで無いと言えば嘘になります。けど私はそんな顔をしている人に面と向かって恨み言を言えるほど図太くないつもりです。」
「…」
「遠野君のお墓でしたね。明日連れて行ってあげます。秋葉さんに追い返されなければですが。」
「あ、妹はまだ生きてるんだ。」
「ええ。あの一族の中では異例の長寿でしょう。そういえば遠野君との子供もいるんですよ。」
「妹との?」
「ええ、女性の方です。彼女はすでに亡くなられていますがその子供、遠野君の孫にあたります。その子には遠野君の面影が強く出てますよ。」
「へー」
「まあそれは明日の楽しみとして、そろそろ夜が明けますね。私はこの後することがあります。せっかくだからあなたもどうですか?」
「なに?」
「ええと、とりあえずはこの辺のカレー屋さんを制覇しましょう。」
「…とりあえず?」
「その後自分でその味を再現するのです。」
「いやよ。」
「まあまあ、そういわずに。行きますよ。」
伝票を手に取り立ち上がる。アルクェイドは文句を言いながらもついてきている。いつもはやられっぱなしなのだからたまには振り回しても罰は当たらないだろう。
多分次にあう時には殺しあうのだろうけど、この友達のような振る舞いは悪くない。だから今日は思いっきり楽しもう――

 

――――――――――――

あとがき

これも以前TYPE-MOON UNOFFICIAL BBS様に投稿させて頂いた作品です。

これは完全に書きながら考えました。微妙な所もあると思いますが(微妙じゃないところがあるのか?)目をつぶってください。

bbsやメールで感想をいただけると管理人が小躍りして喜ぶのでよろしくお願いします。

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