愚民共どもはいつの世も変わらない、その時代ごとの偽りの理屈を真理のごとく妄信し、別の理屈を振りかざすものと争う。
おとなしく我の下で畑でも耕して居ればいいものを…
しかし塵も積もれば山となる物だ、この天を貫かんばかりの建造物の数々は素直に感心する。すでに人間どもの科学は魔術の類では未来永劫たどり着けない所まできているのだろう…
しかし最近の愚民共は我を敬うということを知らん。大体昔から愚民共は…

ループ気味になりつつある思考を持て余しながら、最古の英雄王ギルガメッシュは都心を歩いていた。
実を言ってしまえば彼は非常に暇を持て余していた――

ドンッ

―その金髪の女にぶつかり尻餅をつくまでは

 

 

「ごめんねー、大丈夫?」

金髪の女性は倒れた男に手を差し伸べた。

しかし英雄王はその手に目もくれず、自らの財宝の中から剣を取り出し、目の前の無礼な女の首を刈ろうと剣を振るった。
驚いた女性は手でその進行を妨げようとする。だがその一振りは宝具の鋳型たる物の一撃、それは手の妨げなどに気を止めることも無く、軽い水音と共に首を刈り取るはずだった。

ギィン

しかしそれが発した音は明らかに金属同士の衝突の音、驚くことに彼女の爪はその一撃を受け止めていた。

「なんのつもり?」
「わからぬか、貴様の犯した罪を償わせてやろうというのだ」
「おおげさねぇ」
「貴様のごとき雑種が…」

そこで言葉を区切り、値踏みする様に目を向ける。

「何よ」
「なるほど、真祖というやつか」
「…」
「ふむ、泣いて許しを請うならば許してやらぬでもないぞ。星の分身たる獣を飼うのもまた一興だ」
「……」
「どうした、跪け」
「…なんていうか、ここまで見事になめられたのは初めてだわ。志貴に暴れるなって言われてたから我慢してたけど、もう我慢できない」
「ほう、ならばどうする」
「殺してあげる。名乗りなさいアラヤの僕、名前くらいは覚えていてあげるわ」
「ほざいたな、ガイアの獣。我が名はギルガメッシュ、その度胸に免じて我が直接手を下してやろう」
「私はアルクェイド、アルクェイド・ブリュンスタッド」

アルクェイドと名乗る女性が両手を広げた。
すると英雄王の周りを囲むビルや人は掻き消え、代わりに石の柱に囲まれ、柔らかな絨毯の上に立っていた。

「下らぬ手品だな」
「これは私のお城、別に招待する義理も無いけど、あんな所で暴れるわけにはいかないもの」
「ふん」

英雄王の体に金の鎧が出現する。

「我を殺すといったな、ならば」

黄金に纏われた片腕を上げる

「この攻撃、耐えて見せよ」

英雄王の後ろに目に見えない扉が出現する。

「―――ゲート・オブ・バビロン」

その扉から出されたものは古今東西、あらゆる場所の神話に出てくる"宝具"だった。
その五十余りの宝具は全てアルクェイドに向けられていた。

「…」

パチン、と英雄王が指を鳴らす。
すると宝具の群れはアルクェイドに向かって突進する。
それは圧倒的な暴力、標的に向かう殺意の面。その絶対的な暴力に向かってアルクェイドは爪を振るった。
刺さるはずの槍、剣、斧、矢、全てがその一振りの前に叩き落される。
力はより大きな力の前に屈する。
その美しき舞はまさに力、全ての障害をねじ伏せる女王の舞だった。
そしてその舞に英雄王は見惚れていた。

「おしまい?」

すべての宝具を叩き落したアルクェイドが笑みを浮かべる。
さすがに無傷というわけにはいかなかったのかその両手からは血が滴っていた。

「はははははははははは!」

我に返ったギルガメシュは笑い始めた。
腹を抱え、心底おかしそうに、笑っていた。
アルクェイドはその様子をいぶかしんだ。

「くくくく!久しぶりだぞ!これほどに感情が動いたのは!なるほど、貴様は確かに強い!」
「…壊れた?」
「光栄に思え!我が最強の一撃を持って殺してやる!」
「会話する気無いのね…」

ギルガメッシュはもう一度手を掲げる。
先ほどの倍ほどの数の宝具が部屋を占める。

「さっきと同じじゃない」
「節穴め、これが我にのみ持つことを許された―」
言いながら一本の剣に手を伸ばす。

「そこまでよ」

アルクェイドがギルガメッシュに手を向けると突如鎖が出現し、ギルガメッシュを縛り上げた。

「貴、貴様」
「別に付き合ってあげても良かったんだけど、なんだか飽きちゃった」
「この程度の鎖…!」
「無駄よ。貴女程度で切れる代物じゃないわ」

一歩一歩距離を詰める。

「これが貴方の結末、道端でぶつかった女に殺される。身の程を間違えた為政者の末路なんてこんなものよ」
「黙れ下郎!貴様ごときに―」

パシャ

アルクェイドの爪は英雄王が言葉を繋ぐ事を許さず、その首を飛ばした。
そしてその体と共に宝具は崩れ落ち、撒き散らした血すらも光となり崩れ去った。

アルクェイドを囲む景色が元に戻る。
突然出てきた金髪の美女に通行人が数人目を留める。しかしアルクェイドが何事も無かったかのように歩き始めると怪訝そうに見送り、彼ら自身もそれぞれの目的地に歩き始めた。

 

 

 

 

 

あとがき

…………オチが思いつかなかったんです!!

ギルガメッシュファンの皆さん申し訳ありません!

でも格上の相手と戦ったら彼はこんな感じなのではないかなーとか

最初の構想としては

ギルガメッシュがけんかを売る→アルク流す→ギルガメッシュのわがまま→アルク切れる→更にわがまま→アルク呆れる

という感じにしようと思っていたのですけどどうでしょう。

bbsやメール、web拍手などで感想をいただけると管理人が喜ぶのでよろしくお願いします。

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