「士郎と遠坂さんの倫敦行きを祝して、カンパーイ!!」
士郎とセイバーそして凛とアーチャーが倫敦へ留学する前夜、衛宮宅ではささやかな宴会が催された。
「ほらほら士郎ー、今日ぐらい飲みなさいよー」
「いやいや明日も早いからそういうわけにも…」
「うー、どうせ飛行機の中で散々寝るんだからいいじゃない!最後ぐらいお姉ちゃんの言うこと聞きなさーい!!」
「お、おい藤ねぇって、もうこんなに飲んだのか!?、ペース速すぎだって!」
「うわーん!!、遠坂さんに士郎捕られちゃったよー!!」
「先輩!私も卒業したらすぐに行きますから!!、それまで姉さんの誘惑に負けないでくださいね!?」
…宴は阿鼻叫喚の様相を呈していく
宴も終わり皆が寝静まったころ、大河は下弦の月の下の縁側で一人、一升瓶を抱えていた。
「眠れないのか?」
「!、アーチャーさん。ええ少し目が冴えちゃって」
「まあ無理も無い、奴は貴女にとって弟のような者なのだろう?」
アーチャーはコップを持って腰を下ろす
「そうですねー。私には家族がたくさん、特に男の人はたくさん居ましたけど、弟は士郎だけでしたから」
言いながらアーチャーの持つコップに透明な液体を注ぐ
「だいぶ飲んでたみたいだが、大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ、明日は休みなんですから」
「いや、そういう事ではなく…」
「士郎だって大丈夫ですよ。セイバーちゃんや遠坂さんがきっと守ってくれます。アーチャーさんもよろしくお願いしますよ?」
「…既に酔ってるのか」
「酔ってなんていませんよー」
「酔っているだろう、そらもういい加減酒瓶を離せ」
からからと笑いながら身をよじってアーチャーの手を回避する。
「まったく、それでも教師なのか?」
「あはは、アーチャーさん、その言い方士郎みたいですよ」
アーチャーは一瞬呆け笑って答えた。
「何を言っている、あんな小僧と一緒にされるのは心外だな。そういうところが酔っているというんだ」
アーチャーは再度酒瓶に手を伸ばす、今度は大河は避けずに酒瓶をぎゅっと握った。
「アーチャーさん、士郎はあなたの世界でもやって行けますか?」
お互いに酒瓶を握り、顔の触れそうな近さで大河はアーチャーの瞳を覗き込んだ。
「…気付いていたか」
「そりゃあいくら私が鈍くても、酔っ払ってたって気付きますよ。これでも私は英語と剣道は必死でやってきたんです。それなのにセイバーちゃんには剣に触れることもできなかった。セイバーちゃんだけならともかくアーチャーさんもライダーさんもよく港で釣りしてる人だってとんでもなく強いでしょう?、それで士郎に聞いてみたらみんな切嗣さんの関係者みたいだし」
「…」
「それでいきなり遠坂さんと留学なんていったら、気が付かない方がどうかしてますよ。」
「…止めないのか?」
その言葉を聴いて大河は微笑んだ
「士郎は帰ってくるって約束しましたから」
「信じているのか?」
「ええ、きっと帰ってきます。だから姉の私はここで家を守っているんです」
「それではまるで妻のようだな」
「あはは、違いますよ。私はお姉ちゃんですから」
酒瓶を奪い取りコップに注ぎケタケタと笑う。
「そらいい加減にしないと明日弟の見送りに寝坊することになるぞ」
「そーですね、そろそろ寝ますか。じゃ、お休みなさい」
「ああ、お休み」
大河は酒瓶を押し付け廊下を歩きさる
「…ごめんな」
「え?、何か言いました?」
「いや、お休み」
大河が角を曲がり視界から消えた時点でアーチャーはもう一度呟いた。
「ごめん藤ねぇ、今度の約束はきっと守らせて見せるから…」
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後書き
久々の更新です。hollowで無かった組み合わせアーチャーと藤ねぇです。
hollowでの藤ねぇが結構つぼだったので書いたのですが…、難しいですね(汗
書き始めた当初は藤ねぇがタメ口でアーチャーが敬語だったのですが普通年齢不詳の外国人(にしか私には見えない)にタメ口は無いだろうということで今の形に、アーチャーは敬語でもいいかも知れませんね。
アーチャーの最後の台詞は許容できない方もいらっしゃるかもしれませんが…、どうでしょう藤ねぇのために士郎を守るアーチャー、私的にはありかなーと
何はともあれ最後まで読んでいただいてありがとうございます。
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